2025年1月より、日本数理生物学会の会長を拝命しました山内です。これから2年間、会長として日本数理生物学会の発展に微力ながら尽力してゆきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。2年間会長を務められた時田さん、事務局メンバーを務められた黒澤さん、瓜生さん、中丸さん、山口さん、入谷さん、ご苦労様でした。学会の発展のためのこれまでのご尽力に感謝いたします。時田前会長にはさらに1年のあいだ副会長を務めていただき、さまざまな助言をいただくことになります。引き続きよろしくお願いいたします。
私は、1989年の数理生物懇談会設立時には博士1年で、また2003年の日本数理生物学会への移行時には現在の所属で准教授についた直後でした。こう振り返ると、数理生物学会の歴史とほぼ同じ期間を数理生物学研究者として歩んできたことになります。そう思うと感慨深くありますが、これまで本学会の会長を務められた多くの優秀な諸先輩方と並ぶのはちょっと荷が勝ちすぎるという思いもあるのが正直なところです。とはいえ、私を会長として選んでいただいた学会員の皆さんの期待に応えるためにも、今後2年間奮闘し頑張ってゆく所存ですので、よろしくお願いいたします。
新事務局には、加茂将史さん(事務局幹事長:産業技術総合研究所)、川口勇生さん(会計:量子科学技術研究開発機構)、池川雄亮さん(事務局幹事:琉球産経(株))、入谷亮介さん(事務局幹事:理化学研究所)に加わっていただき、これらの4名の協力の下で学会事務の運営を進めてゆく計画です。なお、入谷さんは前事務局メンバーですが任期途中で就任されており、在任期間が短いということもあって引き続き事務局幹事をお願いすることになりました。学会運営には学会員の声を広く反映させたいと考えておりますので、学会の方向性なども含めてご意見があれば是非ともお聞かせください。
本年2025年には、これまで日本数理生物学会と並行して中国、インド、日本、韓国の研究者の集いとして開催されてきたCIJKコロキウムが、日本数理生物学会のイベントとしてアジア数理生物学会議(ACMB)という形で再編成されます。そのACMB-JSMB合同大会が、7月7日から11日にかけて京都にて開催予定で、京都大学の望月敦史大会委員長のもと多くの実行委員会メンバーの協力で準備が進みつつあります(実は私自身も実行委員です)。夏の走りの暑い時期でもあり、またインバウンドの観光客でごった返す京都ですが、学会員の皆様におかれましては数理生物学の新しい枠組みが展開する熱気に是非とも加わっていただければと思います。
近年、アジア諸国の科学分野の発展には目覚ましいものがあります。私には台湾に知り合いの研究者がいますが、台湾は日本よりもずっと小さな国でありながら、欧米で学位をとった研究者が大学や研究機関に職を得て先進的な研究を進めてきました。中国も、近年インパクトの高いジャーナルへの論文掲載が頓に目立ってきています。韓国は、一昨年のCIJKコロキウムおよび昨年のKSMB-SMB合同大会の開催における大きな成功を受けて、数理生物学分野がさらに盛り上がって行くでしょう。これらの国々の研究者と協働しつつお互い切磋琢磨して行くことが、数理生物学を発展させていく上で、これからさらに重要になって行くと思います。こうした取り組みは、個々の研究者が「楽しく」研究を進めていくためにも、それを下支えする重要な基盤になると考えます。今後、日本数理生物学会は定期的にACMBを主催することになるはずで、それは学会や学会員にとってそれなりの負担となるものですが、研究活動の基盤作りとしてコミットしていただければと思います。
とはいえ、こうした学会活動に伴う負担をどのようにシェアして行くのかということも、これからは慎重に考えて行く必要があります。学会の若手〜中堅メンバーからは、さまざまな学会業務への対応が求められ負担が大きいという声があるとも耳にします。近年の大学では大講座制に移行している研究室も少なくなく、研究室単位で複数の教員が協力して学会の雑務に当たるという旧来の形が取りにくくなっているということもあるように思います。また、研究における成果を求める風潮が強まって、精神的にも時間的にも研究者に余裕がなくなっているということも背景にあるかもしれません。いずれにしても、学会業務のアウトソーシングを進めることでそうした負担を軽減しつつ、同時に特定の個人に実務が集中するということがないような体制を整えて行く必要があると思います。こうした点については前執行部もさまざまな取り組みをされてきましたが、それを継承してさらに進めて行かなければなりません。数理生物学の発展のためには、数理生物学の楽しみと魅力を次世代に伝えて行く場を提供し続けることが必要ですが、その継続にはサステナブルな運営体制の構築が求められます。その実現には、学会員の皆様のご協力も必須です。また、そのための取り組みについて、皆様から積極的にご意見・ご提言をお寄せいただければと思います。
最後に、本年が学会員の皆様の研究に進展がある年となることを祈念するとともに、そうした研究活動の基盤作りのために日本数理生物学会および数理生物学の発展に向けて取り組んでゆく所存です。何卒、ご協力をよろしくお願いいたします。