会長就任のご挨拶
本年1月より2年間,会長をつとめることになりました明治大学大学院先端数理科学研究科の三村昌泰です.はじめに,山村則男前会長と共に事務局を運営してこられました山内淳さん、江副日出夫さん、加藤聡史さん、この2年間,学会運営にご尽力をいただき本当に有り難うございました.
今期の事務局幹事長は明治大学大学院先端数理科学研究科の若野友一郎さん,会計は総合研究大学院大学の大槻久さん,会員担当は東京大学大学院理学系研究科の小林豊さんにお願いしました.若くて元気の良い人達が事務局メンバーとなり、頼もしく思っています.これからの2年間,彼等と相談しながら学会のお世話をさせて頂きたいと思いますので,どうかよろしくお願い致します.
1989年9月本学会の前身である日本数理生物懇談会が寺本英先生、山口昌哉先生の呼びかけで設立されました.若い会員の方がまだ生まれていなかった23年前のことです.そのときニュースレター第1号が刊行されたのですが、何故かそこに「数理生物学懇談会の発足にあたって」というえらそうな題で拙文を書かせて頂きました.大体の内容は、当時数学の世界にいた私が 1976年、J. D. Murray さんのいたオックスフォードに1年間ほど滞在したことから、徐々に数理生物学の面白さを知り、それを研究分野の1つにしようと決意を抱いたこと、そして1988年に再度オックスフォードを訪れる機会があったとき、S. Levin(当時、コーネル大学), V. Capasso(当時,バリ大学) 大久保明(当時、ニューヨーク州立大学)さん、そして日本から蔵本由紀さん、巌佐庸さんも訪問しており、日本での数理生物学会の設立に向けてかなり熱い議論があったこと等です.この翌年、学会まではいかなかったのですが、その前身である懇親会が設立されたのでした.そして、2003年9月現在の学会が誕生したわけです.初代の会長の松田博嗣先生、そして事務局幹事長の重定南奈子さん達のご苦労は大変だったと思います.現在では会員は200名を超え、他の国の数理生物学会に較べてもかなり大きな学会に成長しました.これはひとえにこれまでの歴代会長をはじめとして,学会員皆様のご努力のおかげであります.本当に感謝しています.
皆様すでにご存知かもわかりませんが、文部科学省では「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」の一環として「生命動態システム科学推進拠点」を実施機関としてする4つの機関がこの1月に決定されました.この拠点の特徴は、計測で得られたデータから数理科学的手法を用いて生命現象を理解すると共に、数理科学と生命科学の融合研究の形成、そして人材育成、更に数理科学、生命科学どちらにも科学として発展していくことを期待された学際的なものであります.この他にも、文部科学省数学イノベーション委員会のもとで数学・数理科学と諸科学・産業界との連携によって、諸科学や産業界における様々な課題の解決に向けて、これまでにない発想により既存の枠組みを超えたイノベーションを生み出すことから社会に貢献するための「数学・数理科学と諸科学・産業との共同によるイノベーション創出のための研究促進プログラム」の公募がやはり1月から始まりました.この公募では、生命、生物系に対して、数理科学的アプローチを展開する数理生物学からの参加を強く望まれています.これら2つの出来事が同時期に起こったのは、偶然ではなく、いまこそ数理生物学を展開している我々の活動が期待されていると同時にその責任をはたさなければならないときであるからではないでしょうか.
2014年7月28日~8月1日にかけて我々の学会と Society for Mathematical Biology (SMB)の合同大会が大阪国際会議場で開催されることはすでにニュースレター68号で紹介されています.この大会には、中国数理生物学会、韓国数理生物学会にも協力をお願いしており、アジアで開催される最大の数理生物学の大会です.我々の学会がこのような大きな国際会議を開催するのは始めてです.過去には、日本数理生物学懇談会の時代、1996年6月、重定南奈子さんを組織委員長として開催された Kyoto Conference on Mathematical Biology (KCMB) があり、それ以来だと思います.この年は 我が国の数理生物学の発展に多大な貢献をして頂いた寺本英先生そして大久保明先生を失った年であり、古希を祝うためではなく、その追悼となった忘れることのできない国際会議です.個人的なことになりますが、数学の世界にいた私が、お二人から数理生物学に関して色々なことを学ぶことができたからこそ、これまでやって来れたのだと思っています.この会議からほぼ20年経った今、私が今回の合同大会のお世話をすることになったのは一つの巡り合わせだと思い、難波利幸さんを中心とする組織委員の方々と一緒になってこの大会を成功させたい覚悟です.会員皆様のご協力を切に願っています.どうかよろしくお願い致します.
2013年1月
日本数理生物学会会長 三村昌泰
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