巌佐会長からのメッセージNo.5

日本数理生物学会の会員の皆様

2005年2月1日

皆様へのメールのNo.5です。

今回は、研究成果を発表する場であるジャーナルについて紹介します。

日本数理生物学会は独自の英文誌をもたない方針でいます。 

その理由の1つには、Mathematical Biologyの分野では、すでに確立したジャーナルが多数あり、多くの会員が編集委員長や編集委員の形でかかわっているため、それらに投稿することで十分だろうということがあります。

数理生物学とその関係分野のジャーナルで、日本数理生物学会の会員が編集委員や編集委員長をしているものについて、紹介してみようと思いました。ジャーナルに対して親しみが増すと思いますし、日本人だからといって不利になるという懸念が一掃されると思います。もちろん計算結果を示すだけでなく、研究の意義が読者に伝わりやすいように読みやすい論文を書くことはとても大事ですが。とくに若手の会員が興味を持って研究をとりまとめて投稿しようと考えてくださるのではないかと期待してのことです。(以下の仕分けは明確なものではありません)

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数理生物学/理論生物学:

  • Journal of Theoretical Biology

1年に24冊も出版される理論生物学の中心の雑誌です。今年の1月から巌佐が編集委員長(Editor-in-Chief)をしています(実際の作業は昨年9月から)。アメリカからの投稿論文はDenise Kirschner、ヨーロッパからのものはLewis Wolpertに送られて、アジアおよびパシフィック地域からの論文が巌佐のところに来ます。レフェリーを選んだりするのは担当編集者ですが、その人を決める役割です。その編集委員(Editors)には、日本からは、竹内康博、佐々木顕、望月敦史、金子邦彦、の4名にくわっていただきました。

  • Mathematical Biosciences

編集委員長が、Michael Savageauから別の人に変わると聞いています。重定南奈子先生と巌佐が編集委員です。数理生物全般が掲載されますが、どちらかといえば医学関連の分野が強いという印象をもっています。

  • Journal of Mathematical Biology

編集委員長がAlan HastingsとOdo Diekmanです。巌佐が編集委員です。もともとは偏微分方程式系などの数学的な論文が中心でしたが、最近は生物学的な意義を強調したもの、かならずしも数理解析ばかりではないものが掲載されるようになり、より理論生物学の方向にシフトしていると思います。

  • Biological Cybernetics

伝統のあるサイバネチィックスやバイオニクスの雑誌ですが、神経系や脳、心臓などの非線形解析の論文が掲載されます。田中繁さん(理研)が編集委員。

  • Forma

関村利朗さんがAssociate Dditorをしています。これは、自然界の形に関する論文を幅広く掲載します。生物の形態・パターンに関する論文も数多く掲載されています。

  • Theoretical Population Biology

スタンフォードで編集事務をしています。集団遺伝学、進化学、生態学の理論では一番の雑誌です。高畑尚之さん(総研大)と青木健一さん(東大)と巌佐とがAssociate Editorをしています。Gene genealogyなどで優れた論文が掲載されてimpact factorも結構高くなっています。

  • Mathematical Population Studies

当初は人口学における数理モデル、統計解析や数理解析を中心に構想されていましたが、いまはhuman population だけでなく biological poplation, population geneticesに関わる内容の投稿を受け付けています。生物的な内容だけでなく、経済学的社会学的なものも掲載されます。日本からは稲葉寿さ んがadvisory boardに入っています。年4回

  • Mathematical Biosciences and Engineering

American Institute of Mathematical Sciences発行のmathematical biosciences and engineering関係の国際誌。昨年創刊されました。編集委員長はArisona StateのY.KuangとBeihang Univ.のZ.Zheng。竹内康博さんが編集委員。

このほかには、●Bulletin of Mathematical BiologyがSMB雑誌として発行されています。Philip Mainiが編集委員長で、日本人では大澤文夫さんが委員です。

応用数学/非線形数理:

  • Japan J. Indust. Appl. Mathematics

日本応用数理学会の英文誌です。三村昌泰先生が<Area1> の編集委員です。この分野に数理生物学が含まれており,竹内康博さんは日本数理生物学会から推薦された編集委員です(広島大会の総会で承認されました)。

  • J. Methods and Applications of Analysis (International Press)

三村昌泰先生が編集委員です。自然科学、工学に現れる様々な現象を記述モデルの解析。これまで数理生態学や数理生物学にに関連した方程式の解析の論文が公表されています。

  • J. Interfaces and Free Boundary Problems (Oxford Univ. Press)

三村先生が編集委員です。非線形現象で,特に走分離や界面運動の論文が主だったのですが,更に分野を現象の数理に広げ,三村先生が編集委員になったのは、医学や生物学からモデリングに関する論文を探すようにとのmissionを受けたからだそうです。

  • European J. Appl. Math.(0xford Univ. Press)

 三村先生が編集委員。

  • The Chinese Journal of Biomathematics

 中国の生物数学誌。L.Chenが編集委員長で竹内康博さんが編集委員。

  • Differential Eqns and Dynamical Systems

 インドで発行されている応用数学誌(微分方程式中心)V. Sree Hari Raoが編 集委員長で竹内康博さんが編集委員。

  • Mathematical and Computer Modelling

重定南奈子先生が編集委員。

複雑系/人工生命:

  • Physica D

非線形現象や複雑系の論文が掲載されます。蔵本由紀先生(北大)が編集委員長で、西浦さん(北大)、甲斐先生(九大)、池上高志さんが編集委員をしていました。

  • Artificial Life

MITから出版されている、Mark Bedauがチーフで、金子邦彦さん、池上高志さんが編集委員に入っています。人工生命のコア雑誌です。シミュレーション研究が中心ですが、生命、進化システムおよび複雑系一般に、幅広く掲載しています。

Elsevierから出版されています。David Fogelがチーフで、松野幸一郎さんがメインの編集委員をし、池上高志さんも委員にはいっています。Michael Conradが立ち上げた、生命システム/複雑系に関する新しい視点や新しいモデルを大事にしようという雑誌です。システム論や計算論的な視点を押えている理論生命の雑誌です。

  • Complexus (Karger)

三村先生が編集委員。これは社会科学、自然科学まで非常に広い分野に現れ る複雑系の論文を扱っている学際的な雑誌で、全編カラーです。 三村先生は数学モデルの担当で選ばれています。内容的には遺伝子科学の論文が多いです。

生物学のジャーナルだが、理論の論文がよく掲載されるもの:

  • Genetics

遺伝学の伝統的な雑誌。高畑尚之さんが編集委員。

  • Ecological Modelling

伝統のある生態学でのモデリングの雑誌。青木一郎さんが編集委員。

  • Evolutionary Ecology Research

進化生態学の雑誌。Rosenzweigが編集委員長、巌佐が編集委員 同じ分野で、●Evolutionary Ecologyは山村則男さんが編集委員

  • Ecological Complexity.

新しくできた数理生態学の雑誌。重定先生が編集委員。

このほか、●Biological Invasionは、重定先生が編集委員。●Community Ecologyは、山村則男さんが編集委員。また、●Ecological Researchは日本生 態学会発行の英文誌で、谷内茂雄、佐藤一憲、津田みどり、Tae-Soo Chonさんが編集委員に、巌佐が編集委員長にいますが、理論中心の雑誌という訳ではなく生態学全般が掲載されます。同様に、●Population Ecologyも、個体群生態学の雑誌で、重定先生と山村さん、巌佐が編集委員です。

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以上は、運営委員会と学術専門委員会を中心にして聞いた範囲ですので、網羅的にはなっていませんが、大事なもので抜けているジャーナルがあれば、教えてください。

巌佐 庸  日本数理生物学会会長

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